8/12

・「花咲くいろは」は石川県を舞台にしたアニメであった。私が金沢に越してきてから早くも4ヶ月が経つが、7年も前の作品ということで完全に忘れていた。今回、Amazon primeの特典になっていたので劇場版の方だけ視聴した。

ストーリーだけでいえば極めてよくある日常に少し毛が生えたくらいのもので、でもその日常のなかに色々な大人と子供を見た。例えば緒花の母である皐月の学生時代にあった母親との葛藤であったり、例えばなこちがまだ若いながらに大人としての役割を果たそうと子供の自分を押し込んでいることだったり、例えばみんちが自分の視点だけでなく相手の視点に立つことを学んだことであり、例えば緒花の恋愛と皐月の恋愛の違いであったり、例えば皐月が自分の母親を見る視線の変化であったり。そんな大人と子供の間にあって、叫んで逃げたり、苦しんだり、少し成長したり、わかんないままそれでもなにか変わろうとしてる各々の輝きを見せている、そんな生き生きとした青春を感じた。

あと、劇場版なので作画がとてもよかったのと、昔テレビアニメを見た時はわからなかった金沢(香林坊)の景色が結構わかって嬉しかった。

 

・今日は1冊本を読んだ、といってもまだ1/6程度残っているが。

まず第一に自分の読みの浅さを痛感させられた。筆者は東大文学部を卒業後助教授や准教授をやって来た人だが、当然のことながら自分では今後も到底読み込めないであろうレベルで文章を読みこんでいる。しかし、このレベルの読みを読んだことで自分の読みのレベルの上限は引き上げられたと感じるし、詩を読むときに自分が普段考えてたことを利用する方法も少し学んだ。そういう意味でこの本は入試の解説本というよりも、人としての教養をつけるための本であったと感じる。(とここまで絶賛するように書いたが、ただの過剰な深読みなのかもなとも思わなくもない。不要じゃなくて誤りに近いレベルの深読みで、それを断言して書かれてるからなるほどと思ってしまっただけだ、と言われたらまぁそうかもしれないって思う程度には僕は自分への信用がない。)

今回の通読で自分が得られたものは「自分という存在を棚上げしない。所詮は同じ穴の狢であることを自覚すること(以前から漠然と思っていたが、はっきり指摘をされたように感じる)。」「境界と円環という概念があり、これらは生と死の関係を筆頭に様々な場面で見られること(そもそもこの発想を自分はあまり得意としていなかった)。」「自分がそもそも問題を認識できないようなところ、無意識に当然と受け入れてしまっているところがどこまで当然であるのかと問う必要性。」のようにまとめられると思う。

人間、というか私たちは自分の実感から疎遠なものについて、それがどんなに自分と関係があって、一度は考えたことがあったとしてもそれについて考え続けるのをやめてしまいがちである。例えば自分が生きている背景にある他者の死(存在の罪)であったり、その一例として自分が本来その内に存在しているはずの食物連鎖であったり、例えば人間はいつか必ず死ぬという事実であったり。しかし、それらに目を向けていない言葉はとても軽い。今のTwitterなどを見ていると、自分という存在を棚にあげて(なにかの問題があったときにそれを他人事と捉えて)、単なる綺麗事や正論でもって人を批判したいだけの人を見かける。まさにそういった人が現代文を学ぶべき理由がここに詰まっていると感じた。

境界と円環の概念はまだうまく纏まってないので、残りを読んだあとにじっくりまた考えることとする。とりあえず「境界は両義的であり、そのどちらか一方だけを見るのではなく、どちらも併せて抱え込んでいくことが境界とのふれ合い方。」「円環は時間であったり無知と知の関係であったり色々な場面で見られる彼岸と此岸の間の道で、その間には境界による断絶がある。」「断絶を乗り越えて向こうの視点を摂取することは困難だが、それが大事(雑)。」的なことだと思った(結構内容欠けてる)。

また、この本を読みながら派生して考えたことに、「火葬って食物連鎖を忘れさせる役割を果たしてるよな」ということがあった。食物連鎖では生き物は他者を食い、食われる関係にある。人間は一般に死んだあと土壌にすむバクテリアに分解されるが、火葬し壺に入れることで、バクテリアなどの他者に食われることなく自分で処理することができるだろう(昔は土葬なので恐らく腐敗していた)。自分が循環のうちにあり、他者の犠牲の上にあるという事実からの逃避であったり、腐敗する自己、変わり果てる自己からの逃避と死への忌避との関連付けて火葬を捉えることもできそう。火葬がこういう思想を生んだというか。

色々と書いたが、この本は汎用的に使える教養を深めるには非常によい本だと感じたので、特に自分を「優秀で社会問題にも関心があって、他の人を啓蒙してやらないといかん」と思ってる半端に頭のいい人に是非読んでもらいたい。世界が変わる人も少なくないだろう。